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【観光・旅行業界のAI活用事例10選】楽天トラベル・じゃらん・航空会社から変なホテルまで 導入効果を徹底解説
観光・旅行業界のAI活用は、顧客体験向上と業務効率化を同時に実現します。楽天トラベルの自然言語検索、ANAの乱気流予測(精度86%)、JALの全社員向け生成AI、星野リゾートの予約対応効率化など、日本の大手企業が実際に成果を上げている10事例を紹介します。
本記事では、OTA・航空・ホテル・旅行代理店・地域観光の5分野で、AIがどのように活用され、どんな効果を生んでいるのかを具体的なデータとともに解説します。導入コスト、期待できる効果、注意点まで網羅した実践的なガイドです。
目次
- 1. OTA・予約サイトに活用した事例
- 事例1: 楽天トラベルがAIエージェントで最適な宿泊施設提案を実現した事例
- 事例2: じゃらんnetが生成AIチャット機能で顧客ニーズ把握を革新した事例
- 2. 航空業界に活用した事例
- 事例1: ANAがAI乱気流予測で安全性を向上させた事例
- 事例2: JALが生成AIで全社員の業務効率化を実現した事例
- 3. ホテル・宿泊施設に活用した事例
- 事例1: 星野リゾートが生成AIで予約センター対応力を強化した事例
- 事例2: 変なホテルがAIロボットで人手不足を解消した事例
- 4. 旅行代理店・ツアーに活用した事例
- 事例1: JTBがAIアナリストforツーリズムで観光プロモーションを最適化した事例
- 事例2: リクルートが生成AIでインバウンド対応を効率化した事例
- 5. 地域観光・DMOに活用した事例
- 事例1: 大阪観光局が20言語AIチャットボットで観光案内を無人化した事例
- 事例2: 長崎県がAI旅プランで個別最適化された観光提案を実現した事例
- 6. 成功に向けた推奨アプローチ
- 7. 観光・旅行業界のAI導入における注意点
- 8. 観光・旅行業界のAI導入ならビットツーバイトにご相談ください
1. OTA・予約サイトに活用した事例
【この章でわかること】楽天トラベルとじゃらんnetがAIで実現した予約体験の革新。自然言語検索により「温泉でゆっくりしたい」といった抽象的なニーズにも対応可能になり、予約転換率と顧客満足度が向上しています。
この章では、AI技術を活用してOTAの顧客体験を革新し、予約転換率向上と顧客満足度向上を実現した事例を紹介します。自然言語検索・パーソナライゼーション・AIエージェントにより、従来のキーワード検索では実現できなかった高度な宿泊施設提案が可能になっています。2024年のOTA市場では生成AIの活用が加速し、「温泉でゆっくりしたい」「子連れに優しい宿」といった抽象的なニーズにも対応できる次世代型の予約体験を提供しています。
事例1: 楽天トラベルがAIエージェントで最適な宿泊施設提案を実現した事例
出典:
楽天グループ「『楽天トラベル』、ユーザーに最適な宿泊施設を提案するAIエージェント『楽天トラベルAIホテル探索』の提供を開始」(2025年9月22日)
| 企業名 | 楽天グループ |
|---|---|
| 導入システム | 楽天トラベルAIホテル探索(AIエージェント) |
| 導入時期・規模 | 2025年9月22日提供開始、スマートフォン向けに無料提供 |
| 導入前の課題 | 従来の検索条件では表現できない抽象的なニーズへの対応困難 |
| 導入後の効果 | 最大30軒の最適な宿泊施設を自動選出、自然言語での柔軟な検索が可能に |
楽天トラベルは2025年9月に、AIエージェント「楽天トラベルAIホテル探索」の提供を開始しました。このシステムは、楽天トラベルに寄せられた膨大なクチコミ、多様な宿泊プラン、予約トレンドデータを分析し、旅行者のニーズに合わせて宿選びをサポートします。
システムの特徴と効果:
- 自然言語入力に対応し、既存の検索条件に含まれない要望や抽象的な指示でも検索可能
- 最大30軒の宿泊施設を選出し、写真、価格、クチコミ評価、AIおすすめポイントを一覧表示
- 地図上での施設位置表示により、エリアと宿の関係性を視覚的に把握可能
- 追加の候補提示機能(サーチサジェスト)で、さらなる選択肢を提供
- ユーザーとの対話を通じて、正しいニーズを最大限くみ取る対話型UI
従来の検索では「エリア」「予算」「部屋タイプ」などの条件指定が必要でしたが、AIエージェントでは「温泉でゆっくりしたい」「子連れに優しい宿を探している」「記念日にふさわしい高級旅館」といった自然な表現での検索が可能になりました。AIがユーザーの意図を理解し、過去のクチコミや予約データから最適な施設を提案します。
楽天トラベルは今後、「あらゆる旅行シーンにおいて、一人ひとりのユーザーに最適化されたサポートを提供」することを目標に、AIエージェント機能の拡張を進めていく予定です。これにより、宿選びの時間短縮と満足度向上の両立を実現し、競争が激化するOTA市場での差別化要因としています。
事例2: じゃらんnetが生成AIチャット機能で顧客ニーズ把握を革新した事例
出典:
Microsoft Customer Stories「Azure OpenAI Service を活用した対話型 UI を『じゃらんnet』に試験実装」
ITmedia NEWS「『じゃらん』に『AIチャットで提案』機能」(2023年5月31日)
| 企業名 | リクルート(じゃらんnet) |
|---|---|
| 導入システム | Azure OpenAI Service活用のAIチャット提案機能 |
| 導入時期・規模 | 2023年5月にβ版を公開し、ユーザーフィードバックを収集中 |
| 導入前の課題 | キーワード検索だけでは拾いきれない旅行者の要望把握 |
| 導入後の効果 | 自然文から宿泊候補エリアと施設を自動提案、利用者の声をもとに精度改善を進行 |
リクルートが運営する「じゃらんnet」は、2023年5月にAzure OpenAI Serviceを活用した「AIチャットでご提案」β版を公開しました。旅行者が自然文で相談すると、AIが文脈を理解して宿泊エリアや施設を提示し、従来の条件指定検索では拾いきれなかった要望に応える狙いです。
システムの特徴と効果:
- 自然言語の質問(例:「東京から車で1時間の温泉宿を教えて」)を直接入力可能
- AIが文面から意図を読み取り、該当エリアと宿泊施設を複数提示
- 提案結果をクリックすると詳細ページに遷移し、その場で比較検討が可能
- ベータ版として利用者の評価を募りながら応答精度を高めている
利用者が入力した要望に対して、AIは旅先の例を複数示し、詳細を確認できる導線を整備しています。ベータ版の段階では回答が意図通りにならないケースも明示し、評価ボタンからフィードバックを集めて回答の改善につなげています。
2. 航空業界に活用した事例
【この章でわかること】ANAは乱気流予測精度86%を達成し、JALは全社員が生成AIを活用。グランドスタッフの90%以上が対応速度向上を実感するなど、安全性と業務効率が大幅に改善されています。
この章では、AI技術を活用して航空業界の安全性向上と運航効率化を実現した事例を紹介します。乱気流予測・運航ダイヤ最適化・業務自動化により、従来は人の経験と判断に依存していた業務をAIが支援し、より安全で効率的な運航を可能にしています。ANAとJALの両社とも2024年から2025年にかけてAI導入を本格化させ、フライトの安全性向上、遅延・欠航時の迅速な対応、全社員の業務効率化を実現しています。
事例1: ANAがAI乱気流予測で安全性を向上させた事例
出典:
ITmedia NEWS「ANA、AI活用の乱気流予測を導入 過去10年超の『揺れの報告』を活用」(2025年8月7日)
AIsmiley「ANA、AIによる乱気流予測システムを正式導入。日本上空予測モデルにて正答率86%達成」
| 企業名 | 全日本空輸(ANA) |
|---|---|
| 導入システム | AI乱気流予測システム(BlueWX開発) |
| 導入時期・規模 | 2025年7月28日正式導入、国内線・国際線で運用 |
| 導入前の課題 | 乱気流による機体揺れの予測精度が不十分、安全性向上の必要性 |
| 導入後の効果 | 日本上空の乱気流予測精度86%達成、フライト安全性向上 |
ANAは2025年7月28日、AIを活用した乱気流予測システムを正式導入しました。このシステムは、ANAホールディングスと慶應義塾大学の共同研究から生まれた大学発ベンチャー企業「BlueWX」が開発したもので、過去10年以上のパイロット報告と気象データをディープラーニングで学習させています。
システムの特徴と効果:
- 日本上空の乱気流予測モデルで正答率86%を達成
- ANAグループの約2,500人のパイロットが4年間にわたり評価・検証
- 数万件のパイロット報告と気象情報をAIが学習
- 従来の乱気流指標では捉えきれなかった複雑な発生特徴をAIが把握
- 予測結果を実際のフライトルート計画に活用し、安全性と快適性を向上
従来の乱気流予測は、標準的な乱気流指標を用いた手法が主流でしたが、複雑な気象条件下では予測精度に限界がありました。ANAのAIシステムは、気象情報とパイロット報告の両方をAIに学習させることで、乱気流の特性をより正確に捉えることに成功しています。
開発には約10年の歳月がかかりましたが、2,500人以上のパイロットが実際のフライトで検証を行い、予測精度と実用性を高めてきました。この取り組みにより、ANAは乱気流による機体の揺れを事前に回避するルートを選択でき、乗客の快適性向上と機材・乗務員の安全性確保を両立しています。
今後ANAは、予測モデルのさらなる精度向上を目指すとともに、国際線を含む全路線への展開を進めていく方針です。AIによる乱気流予測は、航空業界全体の安全性向上に貢献する技術として注目されています。
事例2: JALが生成AIで全社員の業務効率化を実現した事例
出典:
Impress「JAL、全グループの従業員が利用する生成AIアプリケーションを開発し導入」
日経クロステック「JALの生成AI基盤、全社員の8割利用 整備や空港特化の機能で使い勝手向上」
| 企業名 | 日本航空(JAL) |
|---|---|
| 導入システム | JAL-AI(生成AIアプリケーション)、空港JAL-AI |
| 導入時期・規模 | 2024年度に全社展開、間接部門社員の実質100%が利用 |
| 導入前の課題 | 業務効率化、新人教育の迅速化、多様な業務マニュアルの活用困難 |
| 導入後の効果 | グランドスタッフの90%以上が対応速度向上を実感、文書作成効率化 |
JALは2024年度に、全グループ従業員が利用できる生成AIアプリケーション「JAL-AI」を本格展開しました。間接部門に所属する社員の実質100%がJAL-AIを業務で利用できる環境を整備し、空港のグランドスタッフ向けには専用の「空港JAL-AI」を開発しています。
システムの特徴と効果:
- グランドスタッフの90%以上が「顧客対応速度が向上」「文書作成速度が向上」と評価
- ラウンジスタッフの約70%が「ラウンジ入場条件に関する回答速度が改善」と回答
- RAG技術を活用し、社内マニュアル、FAQ、業務ガイドラインをAIに取り込み
- PC、タブレット、スマートフォンなどマルチデバイスに対応
- 空港特化型AIでは、チェックインカウンターやラウンジでiPadから即座に利用可能
JAL-AIの最大の特徴は、業務特化型のカスタマイズです。一般的な生成AIツールでは対応が難しい航空業界特有の用語、規定、手順書を学習させることで、現場で即座に役立つ回答を提供します。例えば、グランドスタッフが顧客から「このマイレージカードでラウンジは使えますか?」と質問された際、JAL-AIが瞬時に条件を確認し、正確な回答を提示します。
生成結果の品質については、社内マニュアルやFAQを取り込んだRAG基盤をベースにPDCAを回しながら改善。2024年度時点で間接部門の実質100%がJAL-AIを業務で利用できる精度に達しており、空港現場を含めた全社横断の生成AI活用が定着しつつあります。
3. ホテル・宿泊施設に活用した事例
【この章でわかること】星野リゾートは新人がベテラン並みの対応を実現し、変なホテルは144室を7人で運営(生産性4倍)。人手不足が深刻化する宿泊業界でAIが解決策となっています。
この章では、AI技術を活用してホテル・宿泊施設の予約管理、顧客対応、運営効率化を実現した事例を紹介します。生成AI活用による予約対応・AIロボットによる接客・人手不足解消により、限られた人員でも高品質なサービス提供が可能になっています。2024年の宿泊業界では人材確保が最大の課題となっており(72.2%の施設が深刻化を実感)、AIとロボット技術の導入が業界全体で加速しています。
事例1: 星野リゾートが生成AIで予約センター対応力を強化した事例
出典:
PR TIMES「星野リゾート全施設の宿泊予約センターが、生成AI導入で顧客対応力を強化」
日本経済新聞「星野リゾート、宿泊予約業務を効率化 生成AI導入で」(2024年9月19日)
| 企業名 | 星野リゾート |
|---|---|
| 導入システム | KARAKURI assist(生成AIオペレーター支援ツール) |
| 導入時期・規模 | 2024年4月導入、全施設の予約センターで運用 |
| 導入前の課題 | メール対応業務の属人化、新人教育の長期化、施設拡大に伴う人材育成 |
| 導入後の効果 | 新人がベテランを超える問い合わせ対応を実現、正答率80%目標 |
星野リゾートは2024年4月、全施設の宿泊予約センターに生成AIオペレーター支援ツール「KARAKURI assist」を導入しました。2024年は5施設開業、1施設リニューアルを予定しており、拠点拡大に伴う人材育成のスピードアップが喫緊の課題となっていました。
システムの特徴と効果:
- 5,000以上のテンプレートを生成AIで容易に検索可能
- 2024年4月入社の新人が早い段階で業務デビューに成功
- 新人オペレーターが「ベテランを超える数の問い合わせメール」に対応
- OMO・界・BEB 3ブランドで生成AI返信を試験導入
- 食事時間や施設営業時間など普遍的な内容で正答率80%を目標
従来の宿泊予約センターでは、メール対応が属人的になりがちで、新人が独り立ちするまでに長期間の教育が必要でした。星野リゾートのKARAKURI assistは、過去の問い合わせ内容と回答パターンを学習し、適切なテンプレートをAIが提案します。これにより、経験の浅いオペレーターでも、ベテラン並みの回答品質を実現できるようになりました。
さらに、生成AIによる自動返信にも着手しており、「チェックイン時間は何時ですか?」「朝食の時間を教えてください」といった定型的な質問に対しては、AIが自動で正確な回答を生成します。星野リゾートは、次世代予約センターの実現に向けて、正答率80%を目標に掲げ、段階的にAI自動返信の範囲を拡大していく方針です。
この取り組みにより、星野リゾートは施設拡大と人材育成のスピードを両立させ、顧客満足度を維持しながら業務効率化を実現しています。生成AIは、宿泊業界における人手不足と教育負担の両方を解決する有力なソリューションとして注目されています。
事例2: 変なホテルがAIロボットで人手不足を解消した事例
出典:
プレジデントオンライン「”変なホテル”が生産性4倍を実現した理由 30人のスタッフが7人に減った」
AIsmiley「AIを導入したホテル?導入メリットやAI受付の変なホテルを解説」
| 企業名 | HISホテルホールディングス(変なホテル) |
|---|---|
| 導入システム | AIロボット(受付・案内・清掃・配膳) |
| 導入時期・規模 | 2015年開業、全国展開中(複数拠点) |
| 導入前の課題 | 少子高齢化による人手不足、地方都市でのスタッフ確保困難 |
| 導入後の効果 | 144室を7人で運用、生産性4倍向上(開業時30人→7人) |
HISホテルホールディングスが運営する「変なホテル」は、AIロボットによるホテル運営の先駆けとして2015年に長崎で開業しました。人手不足という社会問題に対応すべく、受付からチェックイン、客室案内、清掃、配膳まで、多くの業務をロボットが担当する革新的なホテルです。
システムの特徴と効果:
- 144室規模のホテルを7人で運用(従来は30人必要)
- 生産性4倍向上を実現
- フロント業務の大部分をAIロボットが対応
- 配膳ロボット導入施設の71.4%が「人手不足解消につながった」と回答
- 地方都市でもホテル運営が可能に
変なホテルの最大の特徴は、徹底したロボット活用です。フロントでは恐竜型ロボットやヒューマノイドロボットが多言語で接客し、チェックイン手続きをサポートします。客室へは自動案内システムが誘導し、荷物の運搬もロボットが担当します。清掃ロボットは客室やロビーの清掃を自動で行い、配膳ロボットがルームサービスを届けます。
この取り組みにより、変なホテルは開業時に30人必要だったスタッフを7人まで削減し、生産性を4倍に向上させることに成功しました。残ったスタッフは、AIロボットでは対応できない複雑な問い合わせや、人間ならではの「おもてなし」が求められる業務に集中できるようになりました。
2024年の宿泊業界調査では、72.2%の施設が「人材確保がより深刻になった」と回答しており、配膳ロボット導入施設の71.4%が「人手不足の解消につながった」と評価しています。変なホテルのビジネスモデルは、人手不足が深刻化する日本の宿泊業界において、持続可能な運営を実現するモデルケースとして注目を集めています。
今後も、AIとロボット技術の進化に伴い、より高度なサービスの自動化が進むと予想されています。変なホテルは「変わり続けることを約束するホテル」として、最新技術を積極的に導入し、ホテル業界の未来を切り拓いています。
4. 旅行代理店・ツアーに活用した事例
【この章でわかること】JTBはAIでWebアクセス解析を自動化し、リクルートはインバウンドマーケティング工数を最大15分の1に削減。小規模事業者でも実践可能なAI活用モデルが確立されています。
この章では、AI技術を活用して旅行代理店・観光プロモーション事業の効率化とマーケティング最適化を実現した事例を紹介します。Webアクセス解析・インバウンドマーケティング・コンテンツ生成により、デジタルマーケティングの工数削減と成果向上を両立しています。観光DXが進む2024年から2025年にかけて、地域観光事業者やDMO(観光地域づくり法人)でも、限られたリソースでAIを活用したマーケティング支援が広がっています。
事例1: JTBがAIアナリストforツーリズムで観光プロモーションを最適化した事例
出典:
トラベルボイス「観光産業に特化したウェブ解析ツールで出来ることとは? 可視化でわかるサイトの課題と改善点、JTBグループの担当者に聞いてきた」(2023年9月29日)
JTB「独自の人工知能技術を活用したWebサイト分析・改善ツール『AIアナリスト forツーリズム』を提供開始」(2020年10月9日)
| 企業名 | JTBコミュニケーションデザイン |
|---|---|
| 導入システム | AIアナリストforツーリズム(AIT) |
| 導入時期・規模 | 2020年10月提供開始、観光事業者・自治体・DMO向けに展開 |
| 導入前の課題 | Webアクセス解析の専門知識不足、分析時間の不足、改善提案の難しさ |
| 導入後の効果 | 主要指標を自動可視化し、改善すべき導線が把握しやすくなる |
JTBコミュニケーションデザインは2020年10月、観光・ツーリズム業界に特化したWebサイト解析ツール「AIアナリストforツーリズム(AIT)」の提供を開始しました。このツールは、WACUL社が保有する約3万8000サイトのビッグデータをAI化した「AIアナリスト」をベースに、観光業界特有のマーケティングニーズに対応する機能を拡充・強化しています。
システムの特徴と効果:
- Google Analytics(GA4)と連携し、複雑なデータを視覚化
- 観光業界特有の「デモグラ(属性分析)」「地域分析」「アトリビューション(貢献度分析)」機能を強化
- サイト訪問者数、CV率を自動でレポート化(週次・月次更新)
- SEO分析とキーワード順位評価を自動化
- ユーザーファネル(行動導線)を可視化し、離脱ポイントを特定
- サイト構造診断とUI/UX改善提案を自動生成
AITは週次・月次で自動更新される「サイトレポート」に訪問者数やコンバージョンレート(CVR)、流入元などの主要指標を集約し、専門知識がなくても施策の効果を把握しやすくします。GA4の画面では追いづらい指標もグラフ化されるため、「先週から始めた広告施策の影響」を即座に確認可能です。
さらに、ユーザーファネルや行動導線を可視化し、離脱ポイントや改善すべきページをAIが示唆します。観光事業者や自治体はレポート共有の手間を抑えつつ、データドリブンな意思決定を進められるようになり、デジタルマーケティングのPDCAを高速回転させる基盤として活用されています。
事例2: リクルートが生成AIでインバウンド対応を効率化した事例
出典:
リクルート「生成AI活用でインバウンド対応を効率化 マーケティング分析工数を最大15分の1に削減、熱海市で実証」(2025年2月26日)
| 企業名 | リクルート(じゃらんリサーチセンター) |
|---|---|
| 導入システム | 生成AI活用のインバウンドマーケティング支援ツール |
| 導入時期・規模 | 2025年2月熱海市で実証実験、自治体・DMO向けに展開予定 |
| 導入前の課題 | インバウンドマーケティングの工数過多、多言語対応の負担、限られたリソース |
| 導入後の効果 | マーケティング分析工数を最大15分の1に削減、翻訳工数12分の1削減 |
リクルートのじゃらんリサーチセンターは2025年2月、生成AIを活用したインバウンドマーケティング支援の実証実験を熱海市で実施しました。観光庁の「観光DXにおける生成AIの適切かつ効果的な活用に関する調査事業」の一環として行われ、限られたリソースでも効率的にインバウンド対応ができる「スモールスタート」型のAI活用モデルを確立しています。
システムの特徴と効果:
- マーケティング分析工数を約15分の1に削減
- 域内データ分析工数を約4分の1に削減
- 多言語翻訳工数を約12分の1に削減
- 台湾・香港・アメリカ市場のトレンドを迅速に分析
- 観光客の問い合わせデータを自動要約
- 3つの翻訳手法(機械翻訳、ChatGPTローカライズ翻訳、ChatGPT新規多言語コンテンツ生成)で高品質な多言語対応
従来、自治体やDMOがインバウンドマーケティングを行う際、市場調査、データ分析、多言語コンテンツ作成に膨大な時間とコストがかかっていました。リクルートの生成AI活用モデルは、これらの工数を最大15分の1に削減し、小規模な自治体でも実践可能なレベルまで効率化しています。
熱海市での実証実験では、台湾・香港・アメリカの3市場に焦点を当て、各市場の旅行者行動データを分析しました。生成AIが、ブログウォッチャー社の位置情報データと組み合わせて、オンライン上の定性データや旅行者との対話履歴から洞察を抽出し、効果的なマーケティング戦略の立案を支援しました。
特に多言語翻訳では、単なる機械翻訳ではなく、ChatGPTを活用したローカライズ翻訳や新規多言語コンテンツ生成により、高品質な翻訳を実現しています。これにより、各国の文化やニュアンスに配慮した情報発信が可能になり、訪日外国人観光客の満足度向上につながっています。
リクルートはこの実証実験の成果を基に、自治体やDMOが少ないリソースでもインバウンドマーケティングを効率的に実施できるよう、生成AI活用のガイドラインと支援ツールの提供を進めています。2024年の訪日外国人観光客数は2019年比115.6%に達しており、効率的なインバウンド対応の重要性がますます高まっています。
5. 地域観光・DMOに活用した事例
【この章でわかること】大阪観光局は20言語対応の生成AIチャットボットで24時間の観光案内を実現し、長崎県はAI旅行プラン生成で旅程づくりを自動化。訪日外国人客が2019年比115.6%に増加する中、自治体のAI活用が加速しています。
この章では、AI技術を活用して地域観光・DMO(観光地域づくり法人)の情報発信と観光体験向上を実現した事例を紹介します。多言語AIチャットボット・AI旅行プラン生成・24時間観光案内により、訪日外国人観光客への対応強化と、観光客一人ひとりに最適化された旅行提案が可能になっています。2024年の訪日外国人観光客数は2019年比115.6%に達しており、限られた人員で多様な観光ニーズに対応するAI活用が全国の自治体・DMOで急速に広がっています。
事例1: 大阪観光局が20言語AIチャットボットで観光案内を無人化した事例
出典:
デジタル田園都市国家構想「大阪公式観光情報サイト『osaka-info』の生成AIチャットボット」
| 自治体名 | 大阪観光局(大阪府) |
|---|---|
| 導入システム | 20言語以上対応の生成AIチャットボット(osaka-info) |
| 導入時期・規模 | 2023年度に公式観光サイト「osaka-info」へ導入、案内所「PivotBase」等で検証 |
| 導入前の課題 | 急増する訪日客への多言語対応と、万博を見据えた24時間案内体制の整備 |
| 導入後の効果 | 20言語以上・24時間365日の無人応対、1,000件超の観光データから最新情報を提供 |
大阪観光局は、大阪公式観光情報サイト「osaka-info」に20言語以上へ対応できる生成AIチャットボットを導入し、訪日旅行者がいつでも質問できる環境を整えました。JTBとKotoznaが共創し、OpenAIのChatGPTを活用した仕組みで、大阪に特化した最新データをもとに回答します。
システムの特徴と効果:
- 20言語以上で自然な会話ができ、24時間365日無人で対応
- 1,000件超の観光スポット情報を学習し、大阪ならではの回答を提示
- OpenAIのChatGPTを組み込んだ会話エンジンで柔軟に質問に応答
- 大阪観光案内所「PivotBase」など実際の窓口でも検証し回答品質を改善
- 大阪・関西万博を見据え、多言語問い合わせの利便性と生産性を両立
従来は有人対応の時間帯や対応可能な言語に制約がありましたが、チャットボットを活用することで、深夜帯や混雑時でもスムーズに案内できるようになりました。大阪観光局は実地検証を通じて回答の調整を続け、万博来訪者を想定した多言語サービスレベルの底上げを図っています。
事例2: 長崎県がAI旅プランで個別最適化された観光提案を実現した事例
出典:
PR TIMES「AVA Intelligence、長崎県観光サイトへAI旅行プラン生成機能を提供開始」
ながさき旅ネット「旅行計画はAIにお任せ!あなたに最適なプランを瞬時に作成します」
| 自治体名 | 長崎県 |
|---|---|
| 導入システム | AI旅プラン長崎県(AVA Travel旅程生成AI) |
| 導入時期・規模 | 2025年3月24日提供開始、公式観光サイト「ながさき旅ネット」に実装 |
| 導入前の課題 | 多様な観光ニーズへの個別対応困難、旅行計画の複雑さによる離脱 |
| 導入後の効果 | 瞬時にパーソナル旅行プラン生成、主要予約サイトへの導線も提供 |
長崎県は2025年3月、公式観光情報サイト「ながさき旅ネット」に、生成AI技術を活用した旅行計画サポートサービス「AI旅プラン 長崎県」を導入しました。AVA Intelligence株式会社が開発する「AVA Travel」の旅程生成AIをシステム提供することで、ユーザー一人ひとりに最適化された旅行プランを瞬時に生成できるようになりました。
システムの特徴と効果:
- マニュアル不要のシンプルな入力画面で誰でも簡単に利用可能
- 具体的な日程、人数、訪問したい場所、AIへの希望を入力するだけで旅程生成
- 長崎県観光連盟の豊富な観光データをAIに事前学習
- 生成したプランから主要なオンライン予約サイトへ移動でき、手配まで支援
- 観光スポット、交通手段、所要時間を考慮した実現可能なプラン提案
- 自治体ネットワークとAI技術を活用した観光DX推進のファースト事例
従来の旅行計画では、複数の観光サイトを見比べながら、移動時間や観光スポットの営業時間を確認し、宿泊先を探すという複雑な作業が必要でした。AI旅プランは、これらの煩雑なプロセスを自動化し、「1泊2日で長崎市内を観光したい」「子連れでも楽しめるスポット中心」「歴史的建造物を巡りたい」といった具体的な希望を入力するだけで、最適な旅程を提案します。
特に画期的なのは、生成した旅程から主要なオンライン予約サイトへそのまま遷移できる点です。AIが提案した候補を確認しながら宿泊手配まで進められるため、ユーザーは「計画から予約まで」をシームレスに完了できます。これにより、旅行計画の途中での離脱を防ぎ、観光客の満足度向上と地域への誘客促進を両立しています。
長崎県の取り組みは、株式会社トラベルジップの自治体ネットワークとAVA Travel及び生成AI技術を活用した観光DX推進のファースト事例として注目を集めています。今後、全国の自治体・DMOがこのモデルを参考に、AI旅行プラン生成機能の導入を進めることが期待されています。
観光庁も「観光DXによる地域活性化モデル実証事業」で25件を採択するなど、生成AI活用による地域観光の活性化を推進しており、長崎県の事例はその先進モデルとして評価されています。
6. 成功に向けた推奨アプローチ
【この章でわかること】AI導入を成功させるための7つの実践的アプローチ。段階的導入、顧客体験優先、多言語対応重視など、失敗しないための具体的な進め方を解説します。
観光・旅行業界でのAI導入を成功させるためには、以下のアプローチが効果的です:
- 段階的導入:小規模なパイロットプロジェクトから開始し、成果を確認しながら拡大
- 顧客体験の優先:技術導入ありきではなく、顧客満足度向上を最優先とした設計
- 多言語対応の重視:訪日外国人観光客増加に対応した多言語AIの積極活用
- 既存システムとの連携:予約システム・PMS・OTAとのシームレスな統合
- データ活用基盤の整備:顧客データ、予約データ、行動データを統合的に分析
- 人とAIの協働:AIで効率化した業務から創出した時間を、人間らしいおもてなしに注力
- 継続的な改善:PDCAサイクルによるAIモデルと運用プロセスの最適化
これらのアプローチを適切に実践することで、AI技術は観光・旅行業界において競争優位性の源泉となり、顧客満足度向上と業務効率化の両立を実現できます。
7. 観光・旅行業界のAI導入における注意点
【この章でわかること】AI導入で失敗しないための5つの注意点。個人情報保護、AIと人間の協働バランス、導入コスト、技術的課題、文化的配慮について実践的に解説します。
観光・旅行業界でAIを導入する際は、技術的な側面だけでなく、法的規制、データプライバシー、顧客体験への影響、コスト対効果など多面的な検討が必要です。本章では、実際の導入事例から得られた教訓と、成功に向けた重要な注意点を解説します。
個人情報保護と多言語対応
宿泊客の氏名、住所、クレジットカード情報、旅行履歴など、観光・旅行業界では機微な個人情報を扱います。AIシステムでこれらのデータを活用する際は、個人情報保護法やGDPR等の法的規制への準拠が必須です。特に、訪日外国人観光客のデータを扱う場合は、各国の法規制への対応も必要になります。
- 個人情報の暗号化と安全な保管
- データ保存期間の明確化と適切な削除
- 第三者提供時の同意取得プロセス確立
- 多言語でのプライバシーポリシー提示
AIと人間の協働バランス
AI導入により業務の自動化が進む一方で、観光・旅行業界特有の「おもてなし」「人間らしい温かみ」は依然として重要です。AIで対応できる業務と、人間が対応すべき業務を明確に区分し、適切なバランスを保つことが成功の鍵となります。
- 定型業務はAIに任せ、複雑な相談は人間が対応
- AIの限界を認識し、適切なエスカレーションルート確立
- 従業員向けAI教育・研修プログラム実施
- AIでは代替できない人間らしいサービスの強化
導入コストと投資対効果
AI導入には初期投資だけでなく、継続的なシステム運用・保守、データ管理、人材育成のコストが発生します。ROI(投資対効果)を正確に測定し、段階的な導入によりリスクを最小化することが重要です。
- 明確なKPI設定と効果測定指標の確立(予約転換率、顧客満足度、業務時間削減など)
- パイロット導入による効果検証
- 長期的な運用コストの見積もり
- システム更新・機能拡張の計画策定
技術的課題とシステム統合
既存の予約システム(PMS)、OTA連携、決済システムとの統合、データ品質の確保、AIモデルの精度向上など、技術的な課題への対応が成功の鍵となります。特に、レガシーシステムとの統合や、リアルタイム処理の要求に応える技術選択が重要です。
- 既存PMS・予約システムとの連携設計
- データクレンジングと品質管理体制の構築
- AIモデルの継続的な学習・改善プロセス確立
- システム障害時のバックアップ・復旧計画
文化的配慮とバイアス対策
AIによる自動判断が差別や偏見を生まないよう、アルゴリズムの透明性と公平性の確保が求められます。特に、多国籍の顧客を対象とする観光・旅行業界では、文化的背景への配慮が不可欠です。
- 学習データの多様性確保とバイアス除去
- AIの判断プロセスの可視化・説明可能性向上
- 多文化への配慮と適切な翻訳品質の確保
- 定期的なアルゴリズム監査の実施
8.AI導入ならビットツーバイトにご相談ください
株式会社ビットツーバイトは、システム開発の豊富な実績を持つ技術パートナーとして、DX推進を支援しています。幅広い技術スタックに精通し、お客様のビジネス課題に最適なソリューションを提供してきました。
実装とスピードで価値を届けるシステム開発
私たちは「人を結び、テクノロジーで未来を拓く」をミッションに掲げ、単なる技術提供にとどまらず、お客様の事業成長を本気で考えた伴走型の開発支援を行っています。観光・旅行業界特有の課題—予約システムの最適化、多言語対応、顧客体験のパーソナライゼーション、OTA連携—に対して、AI技術を活用した実践的なシステムをご提案可能です。
ビットツーバイトが選ばれる理由:
- 迅速な対応力:スピード感を持った開発で、ビジネス機会を逃しません
- ワンストップ支援:企画・設計から開発・保守運用まで一貫してサポート
- API連携の専門性:予約システム・PMS・OTAとのシームレスな統合を実現
- AWS基盤構築:スケーラブルで安全なクラウド環境を提供
- 多言語対応:AIを活用した多言語化の構築もご相談ください
学びと挑戦を大切にする開発姿勢
技術革新のスピードが加速する時代だからこそ、私たちは常に学び、新しい技術に挑戦する姿勢を大切にしています。生成AIをはじめとする最新技術を積極的に取り入れながら、お客様の課題解決に最適なソリューションを提案します。小さなご相談から大規模システム構築まで、どんなご要望にも柔軟に対応いたします。
観光・旅行業界でのAI導入、予約サイト構築、既存システムのリプレイスやAPI連携など、デジタル化に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。御社のビジネス成長を技術で支援いたします。
Webサイト制作やITシステム導入をご検討中の方へ
ビットツーバイトでは、Webサイト制作・システム開発・AI活用支援など、お客様のビジネス成長を支える幅広いITソリューションを提供しています。
新規サイトの立ち上げやリニューアル、業務効率化・DX推進など、ご相談・お見積りはお気軽にお問い合わせください。